残暑お見舞い申し上げます。

前回(【竹村健一先生の〝遺訓〟】)からだいぶ間が開いてしまいました。申し訳ありません。

俄(にわか)役者となって出演した舞台劇「ホテル・モントブランク」、お蔭様で先月28日に無事千穐楽を迎え、約1カ月の役者生活は終了。比べるべくもありませんが、三島由紀夫は文士として映画に初主演した「からっ風野郎」(昭和35年[1960]公開)の撮影初日から、東京帝大法学部同期で顔見知りだった増村保造監督に「あんた、まるで猿のようだね!」と叱責されたといいます。私はといえば……とにかく得難い経験でした。

さて、ジャーナリズムの世界に戻ってみれば、韓国への輸出規制の強化(いわゆるホワイト国からの除外)や、文化庁、愛知県などが支援する国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止されたことなど、日本人として少しでも全うなモノの見方、考え方ができるように発信しなければと思っています。

取り急ぎ「表現の不自由展・その後」について書きます。展示の中止理由は、直接的には展示内容に対する脅迫だとされます。企画展の芸術監督は津田大介氏で、「表現の自由を議論する場としたかった」というのは表向き、氏が何を意図したかはネット動画などから容易に察することができます。

そもそも文化庁、愛知県、名古屋市の補助事業という公金が投じられたイベントとして、企画展の在り方には大きな問題がありました。英文解説に「Sexual Slavery(性奴隷制)」と付された慰安婦像(平和の少女像)や、バーナーで昭和天皇の写真を燃え上がらせる映像など、いくら「表現の自由」や「芸術」を掲げても、その実態は、日本と日本国民を貶める政治プロパガンダと言わざるを得ません。

同芸術祭実行委員会の会長代行をつとめる河村たかし名古屋市長が「国民の心を踏みにじる」として慰安婦像の展示中止を求めたのに対し、実行委会長の大村秀章愛知県知事は、河村氏の要請を「表現の自由を保障した憲法第21条に違反する疑いが極めて濃厚」と非難しました。

さらに、大村知事に対し「辞職相当だと思う」と述べた吉村洋文大阪府知事に「哀れを感じる…。県民の民意を完全に無視している。非常に違和感を覚える。(憲法21条を理解していない)このレベルの人が大阪の代表なのかと思うと驚いた」などと反論しました。

憲法第21条はどう書かれているか。

「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」

たしかに「一切の表現の自由は、これを保障する」とありますが、憲法は同時にこうも規定しています(第12条)

「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」

今回の企画展の内実は、日本への憎悪(ヘイト)です。これが、公金が投じられたイベントとして相応しいか。また、このような日本と日本人へのヘイト行為が、無制限に「表現の自由」として受容されるべきものか。

朝日新聞は社説で〈社会がまさに「不自由」で息苦しい状態になってきていることを、目に見える形で突きつけた〉という。ならば問う。朝日は百田尚樹、櫻井よしこ、金美齢といった論者の講演が市民団体の〝抗議〟なるもので封殺されたときどんな態度をとったか。

敢えて云えば、今回の「表現の不自由展・その後」が、朝日新聞社の主催で、民間の施設が使われ、公金が投じられないのであれば、私はその内容にけっして賛同しませんし、事実誤認があればそれを指摘し、批判しますが、開催そのものに反対はしません。

本質的な問題は、戦後の日本の言語、表現空間の歪(いびつ)さです。「不自由」をいうなら、それは保守派のほうがより不自由であったというのが事実です。

「あなたの意見には反対だ。だが、あなたがその主張を行う権利は、命を懸けてでも守る。」

フランスの哲学者ヴォルテールの言葉を持ち出すまでもないでしょうが、朝日新聞に代表される、いわゆる進歩的メディアは、リベラル派や反日・侮日的な文化人の活動が妨害されると大騒ぎするものの、保守系文化人が同様の目に遭っても黙殺か、ほとんど関心を示しません。こうした二重基準が「言論、表現の自由を守れ」という一般論を纏(まと)ってまかり通っているのです(ちなみに朝日は、今回の企画展中止を受けて1面トップ扱い、2面全体も使い、社会面でも関連記事を並べる力の入れようでした)。

この7月下旬、神戸市須磨区のデパートで予定されていた自衛隊の車両を展示するイベントが中止に追い込まれました。それを報道したのは地元の神戸新聞と産経新聞くらいしかありませんでしたが、二つの問題のメディアの扱いの違いから見えてくるものに是非気づいてほしいと思います。

《自衛隊イベント中止「朗報」 中止申し入れ団体の書き込み批判》

【上島嘉郎からのお知らせ】

●8月15日、大阪市で講演します(入場無料)

■演題「令和に生きる日本人としての覚悟」

■時間 14時~16時半

■会場 オスカー・ホール

(住之江区新北島1-2-1オスカードリーム3F)

■問い合わせ先 大阪府神社庁内 日本会議大阪事務局

 (担当:丸山公紀さん TEL 06-6245-5741)

●拉致問題啓発演劇「めぐみへの誓い―奪還」映画化プロジェクトの御案内

http://megumi-movie.net/index.html

●慰安婦問題、徴用工問題、日韓併合、竹島…日本人としてこれだけは知っておきたい。

『韓国には言うべきことをキッチリ言おう!』(ワニブックスPLUS新書)

http://www.amazon.co.jp/dp/484706092X

●大東亜戦争は無謀な戦争だったのか。定説や既成概念とは異なる発想、視点から再考する。

『優位戦思考に学ぶ―大東亜戦争「失敗の本質」』(PHP研究所)

http://www.amazon.co.jp/dp/4569827268

●日本文化チャンネル桜【Front Japan 桜】に出演しました。

・7月31日〈『言いがかり』しか出来ない、MMT批判の有識者達 /戦争を語る事実・虚構・真実の間〉