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29日は自民党総裁選挙の投開票日です。マスメディアによる世論調査では河野太郎氏の人気が高く、岸田文雄氏、高市早苗氏がそれに続くと報じられてきました。

誰それが総理大臣にふさわしいか、という世論調査は、メディアを通じた知名度の高さと候補者の発言のわかりやすさ(正しさではない)、あるいは新奇さといったものが反映します。

メディアは肝心なことを掘り下げないし、残念ながら国民も本質的な問題には関心が薄い。

「改革、カイカク」と喧しい時代がずっと続いてきましたが、国会においても、メディアにおいても、我が日本の生存を懸けた根本的な議論は何一つ本格的になされていません。

そうした問題意識からこの度の自民党総裁選挙を考えると、私は高市早苗さんを支持します。

この8月初め、久方ぶりに高市さんにお目にかかって話を伺いました。まだ総裁選挙に立候補の意志を公には明らかにされていなかった頃です(ライズ・アップ・ジャパン特典対談としてすでに御覧の方も多いかと思います)。

1月初旬の産経新聞の記事〈【呑牛之気 年男年女】自民・高市早苗前総務相「首相を目指さない理由ない」〉を読んでから、心中期するものが滾っておられるのだろう、と思っていたので、その後の展開に違和感はありませんでした。

9年前になりますが、民主党政権下の平成24年(2012)6月に『別冊正論』第17号として〈覚悟を持って生きる〉という表題の1冊を作りました。「The SEIRON WOMAN」と冠し、御登場いただくのは女性だけという企画です。

〈進学、就職、結婚…男であろうが、女であろうが、また些事であろうが、大事であろうが、価値ある人生のために必要なことは同じです。他国の顔色を窺ったり、己の利益や保身に汲々としたり、そんな情けない男たちに代わって、少しでも「覚悟」をもって生きようとする日本女性の声を聴いてみたい。そんな思いから本書を編みました。〉

「Introduction」にこう記した私は、同書で3人の女性政治家に登場してもらいました。稲田朋美さん、有村治子さん、高市早苗さんです。稲田さんは変わられ、有村さんは成長され、高市さんは我が国の柱石に…と、いま振り返って、時の流れが人にもたらす差異を感じざるを得ません。

昨今の政界を眺めると、自民党も立憲民主党も「保守」を称する人が増えました。ただ、保守とは何かの自己省察はなく、各自が勝手に、あるいは雰囲気的に保守を解釈し、その立場を訴えているようにしか思えません。

たとえば枝野幸男氏は著書『枝野ビジョン』(文春新書)で「保守本流」と自らを語り、河野太郎氏も近著で「本来の保守政治」に日本を戻すと語っています(『日本を前に進める』PHP新書)。

枝野氏の自意識は論外として、河野氏は「女系天皇」を容認する発言や、靖国神社に代わる国立追悼施設建設に賛成した過去からどのように変わったのか。

私が高市さんを支持する理由は、高市さんが、我が国の根本課題とそれを克服するための現実的な階梯を認識していることです。

さらにそれが如何に困難であるかを知った上で、それに挑もうとしている。たとえば約10年前から議員立法として安全保障に関わる土地法案を考え、準備し、自民党という組織の中で如何に苦闘を続けられたか…。

高市さんが、国の名誉や領土保全、歴史認識の問題など「日本を守る」ことに一貫して情熱を燃やしてきたことを多くの国民に知ってほしいと思います。

高市さんは、ごく普通の共働きサラリーマン家庭の長女として生まれました。「The SEIRON WOMAN」で如何なる両親のもとに育ったかを綴ってくれたのですが、高市家にはこんな「掟」があったそうです。

「他人様に迷惑をかけることは絶対にしないこと。早苗ちゃんが過ちを犯したら、家族全員がお天道様の下を歩けなくなるのだよ」

「職業に貴賤は無いよ。汗水たらして真面目に働くことが尊いのだよ」

「陰で他人の悪口を言わないこと。言いたいことは直接本人に伝え、その場合も、相手の気持ちをよく考えること」

「毎日、ご先祖様に感謝をすること」

「食べ物は粗末にしないこと」

「学校では、先生の教えに従うこと」

「家族も集団生活なのだから。他の家族が不愉快になる振る舞いはしないこと」

そして、〈早朝に炊き上がったばかりのご飯やお茶をお仏壇に供えることは、幼い頃からのわたしの役割でした。夜になると、母はお仏壇から下げた固くなって埃をかぶったご飯をお茶漬けにして食べていました。ご飯粒ひとつも無駄にせずご先祖様に感謝しながらお下がりを頂く母の姿は、最高の「食育」でありました。〉

私はこうした日常的な保守の姿に信頼を置くものです。保守は「論」ではなく「暮らし」のことだと、たしか保田與重郎がそんな意味のことを語っていたと思いますが、「お天道様が見ている」「ご先祖に感謝」といった素朴なことの中に、我が国が守るべき、継承していくべき根幹の価値があるのではないでしょうか。

「保守思想の父」とされる18世紀英国の政治家エドマンド・バークは、急激に、強硬に社会変革を進めるフランス革命が、歴史的に培った人々の規律や習慣、道徳観念の破壊にまで及んでいることを徹底的に批判しました。そこには「現在」があるだけで、「過去」は弊履の如く切り捨てられている。

過去との対話や中庸を重んじるのが「保守」です。バークは国家についてこう書いています。

「それは単に生きている人々の間のみならず、現に生きている者とすでに死した者や今後生まれる者との間の共同事業となる。」(「フランス革命についての省察」)

すでに死した者というのは御先祖のことです。バークはそれを蔑ろにしては、共同事業は営めないと、現に生きている者の専断意識、傲慢を強く戒めたのです。過去と未来の結節点に立つ現在の私たちが最も意識すべき価値ではないでしょうか。

今回の自民党総裁選に限りませんが、1980年代半ばからこの方の「改革、カイカク」礼賛、グローバリズムへの傾斜が我が国に何をもたらしたか。「日本を変える」とは何度も聞かされましたが、「日本を守る」とはとんと聞くことがなかった。そんな時代の転換点にならねば、米中のせめぎ合いの中で、日本は推力を失った漂流船のごとく翻弄されるだけでしょう。

我が日本が日本であり続けるために、「日本を守る」「保守に立ち返る」この意識の有無を、国民も自らに問わねばならないと思います。

長々書いてきましたが、この根幹に照らして、私は立候補者の中の第一等が高市早苗さんであると確信する者です。

〈保守思想とは、先人への感謝の気持ちを抱くとともに、守るべきことを守り、未来のために変えるべきことを変える考え方だと思います。本当に長い長い時の流れの中で、数え切れないほどのご先祖さまが奇跡的につないでくださった命を大切に守りたい。田畑を耕し、産業を興し、地域社会や伝統文化を育み、時には命をかけて国土や家族を守ってくださった先人に感謝しながら、次の世代により良い日本を贈りたいですね。〉(令和3年1月12日産経ニュース〈【呑牛之気 年男年女】自民・高市早苗前総務相「首相を目指さない理由ない」〉)

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*平成27年(2015)にPHP研究所から発行された『優位戦思考に学ぶ―大東亜戦争「失敗の本質」』に加筆、再刊しました。

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