米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計(日本時間5日未明時点)によると、新型コロナウイルスの世界の感染者数は累計114万人を超え、世界全体の死者も6万人を超えました。最多はイタリアの約1万5000人で、次いでスペインも1万2000人に迫ろうとしています。
我が国も、この4日に東京都で新たに確認された1日当たりの感染者数が初めて100人を超え、累計891人となりました。国内全体では368人の感染が確認され、これも1日の確認数として最多。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員やチャーター機による帰国者を含め、合計で4205人となりました。
安倍晋三首相は官邸で加藤勝信厚生労働相、菅義偉官房長官らと、緊急事態宣言の可否を含め最新の情勢分析をしましたが、「ぎりぎり持ちこたえている」という判断はどうなのか。急増する感染者数と死者数に世界中の人々の不安は募るばかりでしょう。
少しでも感染を防止するためにはどうしたらよいか。ヒトからヒトへ感染する以上、「密閉空間」「密集場所」「密接会話」の「三つの密」を避けることで集団感染(クラスター)の危険を低減できることははっきりしています。「不要不急の外出」「集会」などの自粛が要請されているのもそのためです。
自らを守ると同時に、他者も守るために、私たちはできることを粛々と行う。前回書いたように、感染爆発を起こさないためにいま私たちが心すべきことは、けっして「慢心した坊っちゃん」になってはならないということです。
桜前線が北上しています。〝平時〟なら桜を愛でる季節に、私たちは新型コロナウイルスと戦っている。桜は来年も咲きます。今年は大人数で集まるのは控え、人混みを避けて、近くに咲いている桜の周りを散策するにとどめましょう。来年も、再来年も、ひとりでも多くの人が桜を観られるように。
国会は「論戦」ではなく、防疫に有効な「議論」を。マスメディアは、不正確な、人々の不安を煽るような伝え方をしないように。
不安は、恐怖と不満を増幅させます。
以前取り上げた寺田寅彦は、「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」とも述べています。寺田は物理学者で、「防疫」に知悉していたわけではありませんが、非常時に臨む人間にとって何が大切かは、防災も防疫も本質的に同じだと思います。
怖がらなすぎて「三つの密」を避けなければ感染拡大につながり、怖がりすぎれば「買い占め」「買いだめ」に奔ってしまう。
私たち日本人は、歴史的に数多の自然災害、疫病の禍を乗り越えてきました。父祖の歩みを思い起こせば、現状の忍耐何ほどのことか、と思います。近くは東日本大震災時の日本人はどうであったか。眼前に新型コロナウイルスの脅威があるのに「何を能天気なことを!」と思われるかも知れませんが、今年は政府主催の追悼式が中止になっただけに、なおさら記憶を呼び覚ましたいと思います。
「ライズ・アップ・ジャパン」3月号で紹介することができなかった話を一つ。
平成23(2011)年8月19日付の産経新聞【談話室】という読者投稿欄に〈セシウム牛肉、私は食べる〉と題する次のような一文が掲載されました。投稿者は大分県に住む77歳の男性です。
〈日本国中、セシウムが検出された牛肉でパニックである。
農林水産省は放射性物質を含んだわらを食べた疑いのある牛の肉をすべて食肉流通団体に買い上げさせ、焼却処分するという。もったいない話である。
今までのところ、セシウムが検出された牛肉の最高値は1キロ当たり4350ベクレルとのこと。
私なりにネットで調べて計算してみたが、この肉200グラムをステーキにして年間に10枚食べても、年間の被曝量は0.1653ミリシーベルトだった。この量ならば、私は全く安心である。
東北の人たちの汗の結晶である牛肉を捨てないでほしい。ぜひ店頭に並べてほしい。ラベルで、セシウムの検出量などを表示してくれさえすればよい。そして、少し安くしてくれると、なおありがたい。
その牛肉を買うかどうかは消費者が自分で決める。子供や若い女性が控えるのも自由だ。
私は買って食べる。〉
〈正当にこわがる〉とは、こういうことではないでしょうか。投稿者は自分が食べることを前提に〝我が身〟の問題として考え、結論しています。そして他者に押し付けていません。日々の暮らしの中では、喫煙やアルコール摂取の健康への影響があります。放射線はそれらと比べてどうなのか…。福島産の農産物・海産物はいまも「風評被害」に晒されていますが、それは少なくない国民がいまも〈こわがり過ぎ〉ているからです(韓国のように明らかな悪意で拒絶している例もありますが)。
新型コロナウイルスに話を戻すと、「自分は感染しない」と思うことは「正当にこわがっていない」ということです。自分を守り、他者をも守る行動を心がけましょう。些事に注意を払うことが大過に至らない術です。
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